自治体ビジネスに取り組まれる方なら、一度は「誰の手あかもついていない超上流の情報は、どこにあるのだろう」と思ったことがあると思います。
これまで2つの企業に所属し、のべ150件近くの自治体案件に従事してきた中で、確実に上流情報をつかむ方法はおおむね集約されると考えています。
それは、「各都道府県に置かれた事務所の営業担当者が、県下の全自治体に御用聞きに回る」「新聞報道で案件発注の気配をつかみ取る」の2つです。
御用聞きのポイント
一つ目の「御用聞き」は、ある程度の企業規模でなければできない方法です。
全国に支社や事業所がなくても、関東・近畿・中部・東北・九州などブロックごとに拠点がれば、そこから管轄エリア内の自治体を定期的に訪問し、課題を聞き取り、自社のサービスの中から最適なソリューションを提案していきます。
御用聞きのポイントは、訪問のタイミングを逃さないことと、自社のサービスの価値をしっかりと理解してもらえるよう説明すること。
どんなにいいサービスや実績があっても、議会中や年度末など行政職員が大忙しのタイミングに訪問してしまうと、話すチャンスさえ得ることが難しいでしょう。
また、行政職員が情報収集している夏~秋のベストシーズンに訪問したとしても、パンフレットを置いていくだけのルート営業では、興味を持ってもらえることも、話を聞いてもらえることもありません。
タイミングよく、自社のサービスに関心を持ってくれる職員の方に出会えたら、自治体がおかれている現状や今後必要と考えている対策、それを実施するうえでどのような課題があるのか、など、幅広く聞き取っていきましょう。
まだ世の中には出ていない、フレッシュな情報が入手できると思います。
新聞報道から読み取るポイント
次に「新聞報道から案件発注の気配を読み取る」方法ですが、これは行政の事業がどのようなプロセスを経て発注されるか、一連の流れを理解しておくことが必要です。
一般的な発注の流れは、まず大上段に事業の方向性を示す「基本構想・基本計画」といった上位計画があり、個別事業の条件を示した「施設計画」へと続きます。
基本構想や基本計画の策定には各1年ずつ、施設計画は難易度に応じて1年~数年かかることがあります。
また、官民連携事業では「基本計画」のあとに民間企業の参画意向を把握するための「マーケットサウンディング」や事業手法を決定するための「可能性調査」が行われます。
これらの調査期間はおおむね1~2年ほどで、結論がでたあと1年ほどして公募がスタートすることが多いです。
以下はPFI事業のプロセスを示した内閣府の資料ですが、公募前の「準備手続き」はどPFIに限らず採用されています。
(出典 https://www8.cao.go.jp/pfi/pfi_jouhou/pfi_gaiyou/pdf/ppppfi_gaiyou.pdf)
つまり、新聞報道で「基本構想が公表された」「基本計画の素案に対するパブリックコメントが行われている」などの情報を追いかけていれば、約3~5年先に公募が始まる可能性の高い案件情報がおのずと集まってきます。
このようにして集めた情報のなかから、自社の得意領域やエリアに絞り込み、意見交換を申し入れていけばよいのです。
しかも事業の方向性を考えているタイミングでアプローチすれば、自社の強みを売り込み、場合によっては事業条件に組み入れてもらうことも可能です。
情報収集の方法は、日経テレコンやFactiva、ELNETなどのクリッピングサービスを活用し、「基本構想」「基本計画」などの上流情報を示すキーワードに加え、「図書館」「ホール」など自社の得意領域のキーワードを掛け合わせ、毎日ヒットした記事を自動でメール配信するよう設定しておけば大丈夫です。
すぐに目的の情報がヒットしない可能性もありますので、あまりに少ない場合は、1週間ほどで見直してみるのもよいでしょう。
上流情報を入手したら
上記2つの方法で超上流の案件情報を入手したら、自治体のホームページで関連情報を片っ端から調べたうえで、意見交換を申し入れてみましょう。
自治体が抱える課題に対する認識、考えられるソリューション、自社でできること、実績、などを伝えることができれば、アポイントの確度は高まります。
逆に、アポイント申し入れの段階で上記を伝えられなければ、アポイントを断られるか、「資料を送っておいてください」という体の良い拒絶の言葉が帰ってきます。
断られたからと言って落ち込む必要はありません。
無駄な営業をしなくて済み、本当に自社の強みが活かせる案件に集中できる、とポジティブに考えましょう。
全国に自治他の数は1700以上あり、一つの自治体には何十もの発注部署があります。
これら膨大なクライアント候補を、可能な限り最小の労力で効率的に攻略していくためには、何よりも「選択と集中」が大切です。
日々のルート営業で、あるいは電話口で、しっかりと自社と相手の相性を見極めることができれば、限られた人数でも効果的な営業活動は十分可能だと思います。
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